FM丹波 ギターの散歩道2024年7月放送分

7月プログラム  7月1日(月)~31日(水)

トークと演奏:足立ゆかり・高村浩二

今月は「ギターの名曲をあなたに」をテーマにお送りしています。雨の季節到来、心地よい雨音がリズミカルに響き、庭の紫陽花は色とりどり咲きかけて満開に、カキツバタの凛として咲いている姿を見ると背筋が伸び、この季節ならではの光景です。日本の夏は梅雨で始まり、日差しが強く厳しい暑さが続きます。路地裏では夏の花、淡いピンク色の芙蓉が咲き、虹色の紫陽花に交じって色鮮やかなノウゼンカツラが咲き、厚い雲の合間から射す太陽の光がより一層辺りを明るくしてくれます。そして、地元福知山城の下に流れる由良川、明智藪を時々通り抜けるさわやかな川風に自然な涼しさを感じます。

・ (月)映画「禁じられた遊び」  (二重奏)

映画「禁じられた遊び」のテーマ音楽としてヒットした「愛のロマンス」はギターを弾く者にとってはこんなに身近に感じる曲はありません。1952年フランス映画「禁じられた遊び」として公開され、日本ではもう70年前になりますが上映されています。監督は「太陽がいっぱい」でもおなじみのルネ・クレマン監督。白黒映画ですが冒頭からいきなり流れてくるテーマ音楽「愛のロマンス」、スペインの有名なギタリストナルシソ・イエペスさんがこの映画のBGMをギター1本で担当され世界中に知られるようになりました。ギターと言えばジャンルを問わずこの曲は弾いてみたいあこがれの1曲でもあり、私の教室に習いに来られるほとんどの生徒さんは、この曲が弾きたいがために習いに来られています。
「禁じられた遊び、愛のロマンス」ギターの名曲のナンバー1なのに謎がいくつかあります。
その1つに「禁じられた遊びは民謡ではなかった」と言う事が今頃になって話題になっています。作曲者が決定的な証拠が無くこの曲がよく演奏されていた1960年頃の日本ではスペイン民謡とか作者不詳で表記されていましたが2012年に作曲者はスペイン、ムルシア県ロルカ町出身のアントニオ・ルビーラさんであると言う事が分かりました。なんと映画のBGMを担当されていたギタリストナルシソ・イエペスさんと同郷、同じ出身地だったと言う事はなんとも奇遇ですね。

・(火)「プレリュード前奏曲第1番」 (高村浩二)

「プレリュード前奏曲第1番」は1887年生まれのブラジルの作曲家、ヴィラロボス、1959年、亡くなる迄多くの作品を残しその数は2000曲とも言われています。しかし、ギター作品の数は、ヴィラ=ロボスの膨大な作品数から言えば、決して多くなく、CD1枚に全作品が収まってしまうほどです。ロボス自身も自らギターを弾いていただけあってギターの響きや特性を生かした作品が多く、そのいずれもがギターリストにとっては重要なレパートリーとなっています。中でも、2019年に公開された映画「マチネの終わりに」使われたショルティシュ:ショーロは映画の場面とマッチして記憶に新しい所です。作曲者のヴィラ=ロボスは自己主張が強く「音楽は数学だ」と言い出し周りの音楽家を慌てさせた。と言うエピソードがあります。でも、よく彼のギター曲の楽譜を見ると確かに数学的な所が多々あり、難しそうに見える楽譜も左右の指使いが同一であったりと、見かけよりは演奏がし易い仕組みになっていて演奏者にとっては大助かりです。
「前奏曲第1番」はプレリュード5曲あるうちの最初の曲、副題として「抒情のメロディ」となっています。冒頭の⑤弦の(シ)2フレットから7フレットの(ミ)へ移動するグリッサンドはギターを弾く者にとっては何とも言えない心地良さ、楽器のうなる響きがたまりません。

・(水) 「川の流れのように」 (足立ゆかり)

「川の流れのように」1989年平成元年1月に発売された、昭和を代表する歌手美空ひばりさんの代表曲。作詞秋元康さん、作曲見岳章さんにより美空ひばりさん生前最後に発表された作品です。息子の加藤和也さんによりますと、ひばりさんはこの曲を20回も歌ってないんじゃないでしょうか?と。美空ひばりさんは「川の流れのように」を発表されすぐに他界されました。自分の歌から遠い若い世代の人達にメッセージを残したいと、命を削って世に送り出された名曲、その陰には孤独と病魔の闘いがあったそうですが遺作『川の流れのように』は平成の時代を駆け抜け150万枚を超える大ヒットとなり、令和の時代になっても今なお、幅広い世代で愛されています。
「川の流れのように」今日の演奏は、私足立ゆかりです。この「川の流れのように」も含め演歌や歌謡曲のジャンルのメロディには歌詞が密接に結びつき、それに歌唱が加わり、あの独特な世界ができて私達の心に焼き付いています。今日の演奏は当然歌はなく、ギター1本で「歌のない歌謡曲」を演奏していきます。編曲は世界中でご活躍中のギタリスト福田進一さん。原曲の良さを崩すことなく、クラシック風の所もあり、又ギターの特徴を最大限に活かした編曲になっています。演歌世代の人たちだけでなく美空ひばりさんの遺志のとおり時代と人とをつなぐ一曲として伝え、繋いでいきたいと思います。
「川の流れのように」人生は旅、さあどうぞお楽しみ下さい。

日本ではギターと言えば古賀メロディーと言われるように演歌とは密接な関係にあります。昭和初期以降、レコードの進出に伴い演歌は歌謡曲として広く一般的に流行し、日本の伝統音楽と西洋の音楽が交わり、独自の世界を作り上げて日本独特の大衆音楽として普及していきます。その中、古賀政男さんは作品の中にギターを取り入れて以来、ギターは演歌、歌謡曲になくてはならない楽器の1つとなっていきます。

・(木)「ミロンガ」 (Duo)

「ミロンガ」とはアルゼンチンやブラジル南部で音楽によって踊られるダンスの曲の形式です。作曲は1949年アルゼンチン生まれのホルヘ・カルドーソ。しっかりとした基礎の上に彼、独特なフィーリングを持ち、ギタリストでもありますが作曲や編曲を多く手掛けています。日本にも1980年に初来日し、彼自身のリサイタルや東京杉並公会堂で開催された新堀寛己先生指揮、新堀ギターオーケストラとの協演、ビバルディ作曲のニ長調のコンチェルトやハ長調のコンチェルトを演奏し、アンコールにはカルドーソ自身が新堀ギターオーケストラのために作曲した「涼風のワルツ」が演奏されています。現在、ライブ版でレコードで残っており、当時の感動がよみがえります。
私のスペインの先生、ホセルイス・ゴンサレス先生にこの「ミロンガ」でレッスンを受けた時の事ですが、カルドーソさんと先生とは大の仲良しでこの「ミロンガ」を作曲された時にホセルイス先生も同席され、先生曰く「五線紙の2枚目の真ん中あたりでカルドーソがワインをこぼしてしまい、書き終わったらワインが5,6本空いていた」と言うようなエピソードを聞かせてもらいました。南米の曲ですが、哀愁をおびた響きはどこか日本の演歌と通じるものがあるのかもしれませんね。
「ミロンガ」こう言う知られざる名曲を「ギターの散歩道」でご紹介していきたいと思っています。作品や作曲家、それを取り巻く人物たち、音楽にまつわる様々なストーリーを知って演奏を聞いてみるといつもとは違った音楽が響いてくるかもしれません。音楽の中に広がる世界が、人生を豊かにしていってくれるでしょう。「ミロンガ」さあ、どうぞお楽しみ下さい。

・(金)「アルハンブラの想い出」 (高村浩二)

「アルハンブラの想い出」アラビア語で「赤い城」を意味するアルハンブラ宮殿はスペイン、アンダルシア州、グラナダの南東の丘の上にある宮殿。歴史を感じる私の大好きな町の1つです。
「アルハンブラの想い出」今日は、静岡県函南町在住、ギター製作家長崎祐一さんからのリクエスト、先日、かんなみ町の工房へおじゃましお話を伺ってきました。長崎祐一さんは、日本ギター専門学校、製作家コース、現在国際新堀芸術学院の卒業生、高村浩二先生や私の後輩になります。平成18年に長崎ギター工房を立ち上げられ製作活動をされています。クラシックギターを中心に、ウクレレの製作の他、「世界にひとつのギターを創る」と言うキャッチフレーズで製作教室をされています。今まで製作教室に通われた生徒さんは年齢も30代から70歳と女性もお一人おられたそうで、伊豆周辺はもちろんのこと東京都内や浜松からも通っておられたとの事。ギターキットを使って、製作時間は週1回2時間で完成までに平均1年ほどかかりますが、どんな方でも道具が使えなくても丁寧に指導します。とお話をされていました。
長崎さんの工房は富士山の見える伊豆の自然な風景の中にあり、近郊には三島大社や水上から上がる花火、熱海海上花火大会、蛍の飛び交う源平川等、とりわけ清水町にある柿田川は富士山周辺に降った雪や雨が地下に浸透し、柿田川に湧き水として湧き出して、諸説ありますがこの湧き出す期間は26年から28年とも言われています。一目みたらわかるようにあの透明感は思わず息を吞んでしまい、水面に映る木漏れ日は神秘的で吸い込まれていきそうです。
「アルハンブラの想い出」今日の演奏は、高村浩二先生です。ギターを弾く者にとっては禁じられた遊びが弾けたら次はアルハンブラの想い出と、トレモロ奏法で奏でる、ギターの名曲です。。
「アルハンブラの想い出」さあ、どうぞお楽しみ下さい。

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