FM丹波 ギターの散歩道2024年10月放送分
10月プログラム 10月1日(火)~31日(木)
トークと演奏:足立ゆかり・高村浩二
今月は「秋の訪れ」をテーマにお送りしています。いつまでも暑さが続きましたが朝晩が急に涼しくなり、空に浮かぶ雲はすっかり秋の雲、日ごとに日差しがやわらぎ、やっと秋の訪れを感じる今日この頃です。つい先日まで青々としていた山々ですが秋は駆け足でやってきました。標高2000メートルにある美ヶ原高原、目の前に広がるアルプスの稜線にかかる神秘的な雲海。見上げると澄んだ空気の中の青い空。青いキャンバスに描かれている白い雲が冷たい秋風によって刻々と形が変わっていくのがおもしろくてつい時間が経つのを忘れてしまい、秋の訪れを感じています。
・ (月)「夕暮れの情景」 高村浩二
「夕暮れの情景」今日は私の生徒さんリスナーMさんからのリクエストです。メッセージを頂いていますのでご紹介しましょう。
先生、こんばんは。仕事のお昼休みに聞いています。先日、夕暮れの思い出があればと言う事で思い出したのですが。奈良の大学に通っていた頃、陸上部で毎日夕暮れまで走り回っていました。ある日、若草山の頂きが燃えるように明るくなりびっくりしました。満月が登ってくる瞬間だったのですが、まるで山焼きのような山が赤く染まった光景に神々(こうごう)しさを感じ、一緒にいた友人と言葉も出ないくらい感動したことを覚えています。今ならインスタなどで映像を共有できるのかも知れませんがあの日の感動は心の中の風景として大切にしています。とメッセージを頂いています。
今日の演奏は高村浩二先生です。ゆったりとしたテンポにシンプルなメロディ、甘く切ない音色、まさに日本人の心を揺さぶる1曲かと思います。音楽は人の世になくてはならぬもの、慰めであり、奮い立たせてくれたり、昔の夢にも誘ってくれます。日々悩みのつきないこの世にあっては一時の安らぎです。
「夕暮れの情景」さあ、どうぞお楽しみ下さい。
・(火)「3つの秋の小品から第3楽章センテナリオ通り」 (二重奏)
「3つの秋の小品から第3楽章センテナリオ通り」作曲者のマキシモ・デ・プジョールは1957年アルゼンチン、ブエノスアイレス生まれ、 作曲家でもあり又ギタリストでもあります。タンゴの神様と言われる同じアルゼンチン生まれのピアソラのお弟子さんでピアソラの影響を大いに受け、初めて聞いた時、ピアソラそのまんまではないかなぁと思ったほどです。
この『3つの秋の小品』は、10年以上前に日本の有名なクラシックギター奏者、福田進一さんとアルゼンチンのギタリスト、エドアルド・フェルナンデスさんのデュオアルバムのための委嘱作品です。この3つの秋の小品は3楽章の構成で、第1楽章「森林」第2楽章「木陰にて」第3楽章「センテナリオ通り」という副題がついています。今日お送りします第3楽章「センテナリオ通り」は暑さも収まり街路樹の木陰から、さあっと通り抜けるさわやかな秋の風と言うイメージの曲です。私はこの季節になるとこの3つの秋の小品が聞きたくなり音源片手に、ドライブしています。夏の終わりにドライブした湘南海岸や箱根の山々、地元の見慣れた大江山の山並みなど、心に刻みこまれた風景
と音楽がぴったりとマッチすると嬉しくなり心が弾みます。
3つの秋の唄より第3楽章「センテナリオ通り」をどうぞお楽しみ下さい。
・(水) 「マズルカ」 (足立ゆかり)
カール・ヘンッエ作曲「マズルカ」カール・ヘンッエは、1872年生まれ。ドイツ、ベルリン出身のギター、マンドリン奏者でもあり、私たちギターを弾く者にとっては「ノクターン」や「緑の木陰にて」の楽曲もあり、お馴染みの作曲家です。
「マズルカ」とはクラシック音楽の中で3拍子を基本とし、リズムを持つ舞曲、踊りの形式です。「マズルカ」にもいくつか種類がありますが今日演奏します楽曲はどちらかと言えば早い踊りの方です。
「マズルカ」今日の演奏は、私足立ゆかりです。カール・ヘンッエの作品番号は作品96番、はっきりとした証拠はありませんが生涯で100曲位作曲しただろうと言う事なので終わりの方の作品です。難易度はそう高くはありませんが、基礎練習をもう一度見直すにはよい曲だと思います。冒頭のスラーでのスケールは心ウキウキと左手のスラーがきれいにハマり、なめらかに演奏出来ればしめたものです。途中、低音でのメロディは重たくならないように歌わせていき、そしてテーマに戻ります。舞曲なのでトリオがありそこは雰囲気を変えて優雅に弾いていき、ダカーポで最初に戻ります。
私はこの「マズルカ」、ギターを始めた頃に弾いてからもう何十年も時間が経過し、そう言えば発表会でも演奏したなぁと思い出しています。改めてこのような楽曲と向き合い、今回を演奏していて思った事は小品でも難しい曲でも使うエネルギーは変わりない事を再確認し、又基礎練習の大切さを実感した楽曲でもありました。
さあ、「マズルカ」どうぞお楽しみ下さい。
・(木)「月光」 (二重奏)
「月光」作曲者のフェルナンド・ソルは1778年、スペインのバルセロナで生まれ、古典派を代表するギタリスト、作曲家として知られています。幼少の頃、バルセロナ近郊、黒いマリア像があるモンセラート修道院の聖歌隊にいました。現在も世界的レベルの美しい声の「少年聖歌隊のミサ」が有名です。私もモンセラート修道院に行った時、日曜日お昼の、ミサの時間にタイミングよく大聖堂の中で少年聖歌隊を聞くことができました。パイプオルガンの伴奏と聖歌隊の天使のような歌声、一気に時が戻りソルも同じように歌っていたのかぁと思うとロマンでした。
「月光」この作品35-22の練習曲はギター中級者の必修科目とも言われ、ギターをやる人なら誰でも知っています。通称月光と言う題名の方が親しまれているのではないかなぁと思いますが、月光と言う呼び名はどうも日本だけのようです。ギターの世界でフェルナンド・ソルは“ギターのベートーヴェン”と言われて、諸説ありますがベートーヴェンのピアノソナタ第14番、通称“月光”のイメージを借りた、と言われています。
「月光」今日の演奏は魅惑のギターデュエット足立ゆかり&高村浩二でお送りします。中級者向けの独奏の練習曲として取り上げられる「月光」はセゴビア編のソルのエチュードでは第5番にあり、美しい旋律や和声の響きが人々の心を捉え、練習曲と言うよりも月の光と言う幻想的なイメージを抱いてしまいます。「月光」独奏で弾いても良し、二重奏でも良し、ショパンは1本のギターより美しいものが唯一ある、それは2本のギターだ、と言っているように、今日は、藤井敬吾先生編曲のサブメロディ付きでお送りします。秋の月夜は美しく、しばし夜空を見上げて思いをめぐらすのもいいものです。
「月光」さあ、どうぞお楽しみ下さい。
・(金)「ミスターロンリーのデュエット」 (二重奏)
「ミスターロンリーのデュエット」遠い地平線が消えて、ふかぶかとした夜の闇に、心を休めるとき、、、深夜0時になるとこの「ミスターロンリー」の曲と共に、城達也さんの落ち着いたナレーションで始まるFM東京のラジオ番組、ジェットストリーム、この曲が流れかけると私はギターの練習終え、今度は夢中になってラジオを聞いていた学生時代、まだ行ったことのない遠い国に思いを馳せ、想像を膨らませながら頭の中で描いていた異国の地、そして、初めての海外旅行と。乗った飛行機の中で聞いた、ジェットストリーム、懐かしくて昨日のように思い出してしまいます。1964年ボビー・ヴィトンによりシングルリリースされ、全米No1ヒットになっています。その頃は、この曲が寂しい兵士の事を歌っていた、なんて全く知らず気楽に聞いていて、後になってからベトナム戦争が勃発し、多くの兵士が派遣され、その兵士の思いを歌っていた事を、知りました。心やさしい旋律と和むハーモニーが歌詞を勇気づけています。
「ミスターロンリーのデュエット」今日の演奏は魅惑のギターデュエット足立ゆかり&高村浩二でお送りします。私が日本ギター専門学校、現在の国際新堀芸術学院に通っていた時に、全日本ギターコンクールの作曲部門に二重奏で応募されてきました。コンクールの事務局から学生でこの楽曲を模範演奏して欲しいと依頼があり、先輩2人、わずか2週間で仕上げられたのを思い出しています。元の曲は主題と6つの変奏と、お馴染みの主題が色々なバージョンに変化していき最後は大フィナーレで終わると言う構成で技術的にも難しい楽曲でした。しかし、もっと二重奏をより身近に親しんでもらおうと、当時の東京新堀ギターアンサンブルのメンバーによって改変され、現在も多くのギター愛好科家の方々で演奏されています。
二重奏の魅力の1つに自分一人ではとうてい演奏不可能な曲も、パートナーの協力を得て、憧れの作曲者や作品を演奏する事ができます。ショパンは「1本のギターより美しいものが唯一ある、それは2本のギターだ」と言っています。
「ミスターロンリーのデュエット」演奏のポイントは、お互いの良さを引き出し、ギターの最大の魅力である音色も表現しつつ、音と音が絡み、色鮮やかなグラデーションと発展していきます。又、流れるようなアルペジオ、3連音符で揺れ動く兵士の気持ちを表していますので落ち着いて弾いて言って下さい。
「ミスターロンリーのデュエット」どうぞお楽しみ下さい。
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